原始仏教の教え
原始仏教とは、お釈迦様が生きていた時代を含む、釈迦の死後に仏教が部派に分かれる以前の、初期の仏教思想や実践のことです。初期仏教や根本仏教とも呼ばれ、お釈迦様の教えを直接的に継承し、現代のテーラワーダ仏教(上座部仏教)にその流れが受け継がれているとされます。因みに、現在日本で信仰されている伝統仏教13宗はいずれも大乗仏教です。大乗仏教は原始仏教から発展し、出家・在家を問わず、すべての人が救われることを目指す「菩薩」の思想を重視する仏教です。
「ブッダの教え」という言葉を耳にしたことがある方も多いかと思います。お寺のお説教で聞いたことがある方、本を読んだことがある方、Youtubeで見たことがある方、今は情報化社会ですから「ブッダ」という言葉に触れる機会は多いかと思います。「ブッダ」とは、サンスクリット語で「悟りを開いた者」を意味する普通名詞であり、歴史上の人物であるゴータマ・ブッダ、つまり釈迦を指しているとも言われています。
2,500年以上も前の原始仏教の時代に悟りを開いた「ゴータマ・ブッダ」の教えはシンプルで、「苦しみを正しく受け入れることができるようにい、自分の心の在りようを変えていくことが、苦悩から解放される唯一の道である」と説き、さらに「心のムダな反応を止めることで、いっさいの悩み・苦しみを抜ける方法」と教えてくれています。原始仏教には、「仏教」という言葉から連想するような”宗教”的な内容とはまったく異なる、実用的で、合理的な、現代にも使える「考え方」があるれているのです。
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【反応しない練習】
ブッダの教えとは「心のムダな反応を止めることで、いっさいの悩み・苦しみを抜ける方法」です。その内容は大きく2つ。① 心の反応を見ること、② 合理的に考えること、です。
①の「心の反応を見る」とは、お馴染みの「坐禅」や、マインドフルネスやヴィパッサナー瞑想のこと。面白いことに、心の反応・心の動きをよく見れば、ザワついた心は静かになります。これは、ストレス解消、気分転換にもってこいの方法です。
②の「合理的に考える」とは、目的がかなうよう、筋を通して考えること。「ムダに反応しない」「悩みを増やさない」ことを実現するためには、
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余計なことを判断しない。どんなときも、自分を否定しない。
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不満やストレスといった「マイナスの感情」で苦しまない。
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他人の視線を気にせずに、自分らしく生きる。
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勝ち負けや優劣にこだわってしまう性格を、もうやめる。
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心から納得のいく人生を、ここから目指す。
という、誰にとっても大切なテーマを、ブッダの教えは説いています。
これが草薙龍瞬著の「反応しない練習」という本の「はじめに」に書いてあるのです。この本が私の考え方や生き方、人間関係を大きく変えてくれるきっかけになりました。何回も読み返し、2,500年以上も前のブッダの教えに心を動かされ、興奮して友人に紹介しまくったのを覚えています。この文章を書いている約1年間のことです。
「反応しない練習」の全6章のうち、最初の第1章で解説されているブッダの教え(第1章に8の教え、第2章以降に38の教えがある)を下記に引用します。ぜひこの本を手に取っていただき、ブッダの教えであり現代の私たちが実践できる「心のムダな反応を止めることで、いっさいの悩み・苦しみを抜ける方法」を確認し実践していただきたいと想います。
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【人間が生涯で体験する苦しみは八つある】
道を生きるものよ、生きること①は苦しみなのだ。老いること②、病気にかかること③、死④は苦しみである。厭わしい人と出会うこと⑤、愛する人と別れなければならないこと⑥も苦しみである。求めるものを得られないこと⑦、ままならない人間の心⑧もまた、苦しみである。(ブッダ最初の説法 マハーヴァッガより)
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【問題解決の手順】
生きることには「苦しみ」が伴う。苦しみには「原因」がある。苦しみは「取り除く事ができる」。苦しみを取り除く「方法」がある。(サルナートでの五比丘への開示、サンユッタ・ニカーヤより)
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【人間が抱える不満や物足りなさの理由】
苦しみが何ゆえに起こるのかを、理解するがよい。苦しみをもたらしているのは、快(喜び)を求めてやまない「求める心」なのだ。(初転法輪経 サンユッタ・ニカーヤより)
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【求める心が作り出す喜び・悲しみ・失望・不満に満ちた人生】
「求める心」が、輪廻の洪水ー満たされなさの繰り返しーを作っている。さまざまな欲求が、奔流となって、この身を突き動かしている。人間は、超えがたい欲望の汚泥に埋まっている。(スッタニパーナ <戦いの手>の節より)
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【正しく理解する】
人は、苦しみの正体について、正しく理解すべきである。苦しみの原因を断つべきである。苦しみのない境地にたどり着くべきである。その方法をこそ実践すべきである。私は確信するに至ったーもはや苦しみに戻ることはないと。(ブッダ最初の説法 マハーヴァッガより)
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【求めすぎていないか】
貪欲に駆られて求めすぎる人間は、本来力のなかった煩悩に負けて、さまざまな苦悩を背負いこむ。あたかも自ら打ち破った船の穴から、水が侵入してくるように。(スッタニパーナ <欲望>の節より)
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【心の状態をよく見て、怒りがあったら・・・】
よく注意して、落ち着きを保っている人は、怒りによって、行いが、言葉が、思いがざわつくことを、よく防いでいる。かくして、心の自由をよく保っている。(ダンマパダ <怒り>の章より)
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【正しい理解】
人は「求める心」によって、苦悩を見る。ゆえに汝は、「求める心」を、正しい道(方法)に立つことで手放せ。そして再び「求める心」に執われて、苦しみの人生に舞い戻らないようにせよ。(スッタニパーナ <彼岸への道>の節より)
<参考図書>
※草薙 龍瞬 著「反応しない練習」KDOKAWA
※佐々木 閑 著「ブッダ 真理の言葉」NHK出版
